ドリフト法による極軸調整

 天の北極(北極星)が見えないところでどのようにして極軸を合わせるか。「星見室」での必須操作の習得にチャレンジしました。ドリフト法の詳しい内容についてはweb検索でいくつかヒットしますので、そちらを参照してください。私は下記ページを参考にさせていただきました。
「北極星が見えない自宅での極軸調整法」https://blogs.yahoo.co.jp/qff01360/24855084.html


 調整手順は次のとおりです。

1.赤道儀の設置
ドリフト法による極軸調整は、まず赤道儀を水平に設置し、極軸の東西方向および高度をできるだけ正確に合わせます。東西方向は、南中時の太陽の影を利用できるのであれば、プラネタリウムソフトと組合せて正確に真北がわかります。代替えで写真Bのようなコンパスを使う方法もあります。ただし、偏角補正(真北と磁北の差)が必要です。東京天文台の理科年表に偏角分布図がありますが、磁気センサー装備のスマホを利用すれば、アプリが真北・磁北・偏角の全てを表示してくれます。中部地方での磁北は真北より概ね8度WEST側を指します。
高度は、観測地の緯度になります。写真Cでは測定カ所の補正値を考慮しながら水準器で設定しています。

2.カメラの向きとコントロールボタンの動作方向の確認
ドリフト法では、東西方向に鏡筒を動かしますので、カメラの長辺を東西方向に合わせます。写真Aでは、赤道儀を西に傾け鏡筒は東を向いています。この状態でカメラを90度左回転すると、画面の上長辺が北N方向、画面の左短辺が東E方向になり、カメラの長辺が東西方向になります。カメラの向きは、赤道儀の傾きと鏡筒の向きおよびカメラの回転方向により変わりますが、直焦点ですから上下左右は正立像になり、感覚的にわかりやすいと思います。

次に赤道儀(EM200)のコントロールボタンの動作方向を確認します。
ここでは鏡筒にPENTAXの105SDPを使用しています。
   写真D:スタートポジション
   写真E:コントローラの赤経方向ボタンS4の押下。鏡筒は東E方向へ移動し、D画面の星は右方向に動く。
   写真F:コントローラの赤緯方向ボタンS5の押下。鏡筒は北N方向へ移動し、E画面の星は下方向に動く。

3.ドリフト法による東西方向の調整
いよいよドリフト法の調整です。調整に使用した機材は写真Aのとおり、C8XLT(レデューサー付き)+Kiss X5で焦点距離は1280㎜になります。フルサイズ換算で2050㎜程度でしょうか。

最初は東西方向の調整です。南天の天の赤道付近の星を画面右側(西側)に導入し自動追尾します。カメラの向きは 2.の説明のとおり画面の長辺が東西方向です。赤道儀のコントローラをガイド駆動モード(EM200ではNS)に切り替え、露出を開始します。露出時間とコントローラの切り替えは上記webサイトのとおりで以下のようになります。
最初の5秒間はノータッチガイド、次の50秒間は西W方向のスイッチ(EM200ではS3)を押下、最後の60秒間は東E方向のスイッチ(EM200ではS4)を押下します。総露光時間は115秒になります。得られた光跡はG写真です。
光跡が北に移動していれば極軸を東に、南に移動していれば極軸を西に方位調整します。光跡がH写真のように一直線になるまで調整を繰り返します。
G写真の場合、南に移動していますので極軸を西に方位調整します。

4.ドリフト法による高度の調整
次に高度の調整です。東北~東の方位で赤緯が少し+の星を導入し、東西方向の調整と同様の調整をします。 この場合、光跡が北に移動していれば極軸を下げ、南に移動していれば極軸を上げ高度調整します。I写真の場合、南に移動していますので極軸を上げ高度調整します。

6.最後に、極軸調整前と調整後の星像を比較しました。いずれも天頂付近をノータッチガイドで175秒の露出です。
今回は調整のための露光時間を115秒にしましたが、焦点距離や求められる精度によって露光時間は異なりますので、実際運用では試行を繰り返し決めようと考えています。(2017/10)

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